所有者が死亡した普通車では、相続する車の価格が100万円以下であることを確認できる場合に、通常とは異なる書類を使って相続手続きを進められるケースがあります。
ただし、
「古い車だから100万円以下だろう」
「買取店で100万円以下と言われたから大丈夫」
と自己判断して進めるのは避けましょう。
100万円以下のケースでは、車の価格が100万円以下であることを確認できる査定証や査定価格を確認できる資料を用意し、「遺産分割協議成立申立書」を使えるか確認することが重要です。(国土交通省土地総合情報システム)
この記事では、
100万円以下とは何か → 対象になる条件 → 金額の確認方法 → 通常の相続との違い → 必要書類 → 売却
の順番で整理します。
所有者が死亡した車の「100万円以下」とは?
なぜ100万円以下だと相続手続きが変わるのか
亡くなった親名義の普通車を、複数の相続人のうち一人が相続する場合、通常は遺産分割協議書などを使って相続による移転登録を行います。
一方、相続する自動車の価格が100万円以下で、遺産分割協議が成立している場合は、「遺産分割協議成立申立書」を使えるケースがあります。
この申立書を使う場合、車を相続する人が相続人であることを確認できれば、登録手続き上、他の相続人について確認する書類を省略できる扱いがあります。(国土交通省土地総合情報システム)
つまり、
100万円以下なら相続そのものが不要になる
のではなく、
相続による自動車登録で使える書類が一部簡略化される可能性がある
と考えると分かりやすいです。
「100万円」は何の金額を指す?
ここでいう100万円は、車を購入したときの価格ではありません。
また、中古車販売サイトに同じ車種が80万円で掲載されているからといって、それだけで対象になるわけでもありません。
必要なのは、相続する自動車の価格が100万円以下であることを確認できる査定証、または査定価格を確認できる資料です。(国土交通省土地総合情報システム)
そのため、
「10年前に200万円で買ったから対象外」
とも、
「古い車だから50万円くらいだろうから対象」
とも自己判断しないようにしましょう。
買取査定が100万円以下なら対象になる?
査定額が100万円以下であれば、その価格を確認できる資料が100万円以下の手続きを検討する材料になります。
ただし、
口頭で「90万円くらいです」と言われただけ
では、登録手続きで価格を確認する資料にはできません。
遺産分割協議成立申立書を利用する場合は、100万円以下であることを確認できる査定証や査定価格を確認できる資料の写し等が必要です。(国土交通省土地総合情報システム)
査定を依頼するときは、相続手続きに使う価格確認資料が必要であることも伝えて、どのような書面を用意できるか確認しておくとスムーズです。
100万円以下の手続きを利用できる条件
車検証上の所有者が亡くなった本人か確認する
まず車検証を確認してください。
亡くなった親が乗っていた普通車でも、車検証上の所有者が親本人とは限りません。
ローンなどの契約状況によっては、販売店や信販会社などが所有者になっている場合があります。
今回の100万円以下の相続手続きは、亡くなった人が車検証上の所有者であるケースを前提に考えます。
普通車であることを確認する
今回扱っている「100万円以下の場合の遺産分割協議成立申立書」は、普通車の登録手続きに関するものです。
軽自動車は相続による名義変更の仕組みが異なるため、同じ考え方をそのまま使わないでください。
親の車が軽自動車だった場合はこちらで確認できます。
【軽自動車を相続して売却するには?亡くなった親名義の車の手続きと流れ】
車が100万円以下として扱えるか確認する
相続する車について、
100万円以下であることを確認できる査定証
または査定価格を確認できる資料
を用意できるか確認します。
「年式が古い」「走行距離が多い」という理由だけでは、100万円以下の手続きを利用するための価格確認にはなりません。
相続人と車を取得する人を確認する
遺産分割協議成立申立書は、
遺産分割協議によって、その車を誰が相続するか決まっている
ことを前提にした書類です。
申立書にも、遺産分割協議が成立した年月日や、この申立書による申請について相続人から同意を得た年月日を記載する欄があります。(国土交通省土地総合情報システム)
そのため、
「100万円以下だから、ほかの相続人に何も確認しなくても自分が売れる」
という制度ではありません。
車が100万円以下かどうかはどうやって確認する?
中古車サイトを見ただけでは判断しない
同じ車種でも、
- 年式
- グレード
- 走行距離
- 修復歴
- 車両状態
などによって価格は変わります。
中古車サイトの販売価格は、その車そのものの査定価格でもありません。
そのため、
「同じ車がネットで80万円だから、親の車も100万円以下」
とは判断しないようにしましょう。
100万円以下であることを確認できる資料を用意する
遺産分割協議成立申立書を利用するには、車の価格が100万円以下であることを確認できる、
査定証または査定価格を確認できる資料の写し等
が必要です。(国土交通省土地総合情報システム)
ここが今回の手続きを利用できるかどうかを判断する重要なポイントです。
査定を依頼するときは「相続する車」と伝える
査定を依頼するときは、
「親が亡くなっており、この車を相続して売却する予定です。100万円以下の相続手続きを検討しているため、価格を確認できる書面が必要です」
と伝えておくと話が通じやすくなります。
単に査定額を知るだけではなく、
相続登録で車の価格を確認できる資料として使える書面を用意できるか
まで確認しておきましょう。
100万円以下なら通常の相続手続きと何が違う?
通常は遺産分割協議書を使うケースがある
相続人が複数いて、そのうち一人が普通車を相続する場合、通常は相続人全員が実印を押した遺産分割協議書を使って手続きする方法があります。(国土交通省土地総合情報システム)
その場合は、相続人全員との書類のやり取りが必要になりやすく、遠方に兄弟姉妹がいると準備に時間がかかることがあります。
100万円以下なら遺産分割協議成立申立書を使える場合がある
相続する普通車の価格が100万円以下であることを確認できる場合には、
「遺産分割協議成立申立書」
を利用できるケースがあります。
この申立書では、車を相続する人自身が、
遺産分割協議によって自分がその車を相続することになったこと
などを申し立てます。
また、車の価格が100万円以下であることを確認できる資料を添付します。(国土交通省土地総合情報システム)
100万円以下でも相続手続き自体がなくなるわけではない
ここは誤解しないようにしましょう。
100万円以下でも、
- 所有者の死亡
- 申請する人が相続人であること
- 車の価格が100万円以下であること
- 誰がその車を相続するのか
などを確認する必要があります。
つまり、
「100万円以下=普通の中古車と同じようにそのまま売れる」
ではありません。
相続人が複数いる場合でも100万円以下の手続きを使える?
相続人が複数いるケースでも利用できる
兄弟姉妹など複数の相続人がいる場合でも、遺産分割協議成立申立書を利用できるケースがあります。
この手続きを使う場合、車を取得する人が相続人であることを確認できれば、登録手続き上、他の相続人を確認する戸籍等を省略できる扱いがあります。(国土交通省土地総合情報システム)
誰が車を取得するのかは先に決める
ただし、
「100万円以下だから、自分が勝手に車を相続して売っていい」
ということではありません。
遺産分割協議成立申立書そのものが、相続人間で遺産分割協議を行い、申請する人がその車を相続することに合意したことを前提としています。(国土交通省土地総合情報システム)
実家の片付けを担当している人が、自動的に車の所有者になるわけではありません。
他の相続人との合意まで省略されるわけではない
100万円以下の場合に簡略化されるのは、自動車の登録申請で提出する書類の一部です。
相続人間で誰が車を取得するのかを決めることまで不要になるわけではありません。
後から、
「そんな話は聞いていない」
と家族間で問題にならないよう、誰が車を取得して売却するのかを相続人間で確認しておきましょう。
所有者が死亡した100万円以下の車を売るときの必要書類
ここでは、100万円以下のケースで特に確認したい書類の概要を整理します。
車に関する書類
まず車検証を確認します。
車検証から、亡くなった親本人が所有者なのか、登録されている住所などに相違がないかも確認しておきましょう。
相続関係を確認する書類
申請する人が亡くなった所有者の相続人であることを確認できる戸籍謄本等が必要になります。
法定相続情報一覧図を利用できるケースもあります。
100万円以下の申立書を使うケースでは、申請する人が相続人であることを確認できれば、他の相続人の確認を省略できる扱いがあります。(国土交通省土地総合情報システム)
遺産分割協議成立申立書
100万円以下のケースで重要なのが、
遺産分割協議成立申立書
です。
申立書には、車両情報、亡くなった所有者、遺産分割協議成立年月日などを記載し、車を取得する相続人が実印を押します。(国土交通省土地総合情報システム)
車が100万円以下であることを確認できる資料
遺産分割協議成立申立書だけでは足りません。
相続する車の価格が100万円以下であることを確認できる査定証、または査定価格を確認できる資料の写し等
を添付します。(国土交通省土地総合情報システム)
車を相続する人の書類
車を相続する人については、発行後3か月以内の印鑑登録証明書や実印、代理申請する場合の委任状などが必要になるケースがあります。(国土交通省土地総合情報システム)
実際には登録内容や売却方法によって追加書類が必要になることがあるため、自分のケースの必要書類は事前に確認してください。
死亡後の車売却に必要な書類全体はこちらで整理しています。
【所有者が死亡した車の売却に必要な書類は?相続状況別に整理】
所有者が死亡した100万円以下の車を売却する流れ
STEP1 車検証で所有者を確認する
亡くなった親本人が車検証上の所有者なのかを確認します。
↓
STEP2 普通車であることを確認する
軽自動車の場合は、今回の100万円以下の手続きをそのまま使いません。
↓
STEP3 相続人を確認する
誰が相続人なのかを整理します。
↓
STEP4 誰が車を取得するのか確認する
相続人が複数いる場合は、誰がその車を相続するのかを決めます。
↓
STEP5 車の価格を確認する
査定を依頼し、車の価格が100万円以下であることを確認できる査定証などを用意できるか確認します。
↓
STEP6 遺産分割協議成立申立書を利用できるか確認する
自分のケースで利用できるか、手続き先や売却先へ確認します。
↓
STEP7 必要書類を準備する
戸籍関係、印鑑登録証明書、申立書、価格確認資料など、自分のケースで必要なものを揃えます。
↓
STEP8 相続・売却に必要な登録手続きを進める
相続人への移転登録をしたうえで売却する方法だけでなく、相続と第三者への名義変更を同時に手続きする方法もあります。(国土交通省土地総合情報システム)
そのため、売却することが決まっているなら、
「必ず一度自分名義の車検証を作ってからでないと売れない」
と決めつけず、売却先がどこまで手続きを扱うのかも確認しましょう。
↓
STEP9 査定額・売却条件を確認して契約する
査定額だけでなく、車両引き取りや手続きの対応範囲なども確認します。
↓
STEP10 車両引き渡し・入金・手続き完了を確認する
車を引き渡したあと、売却代金の入金や名義変更などの手続き完了を確認します。
100万円を超える場合はどうする?
100万円以下の申立書を前提に進めない
確認した結果、車の価格が100万円を超える場合は、100万円以下であることを前提とした遺産分割協議成立申立書は利用できません。
100万円以下だろうと見込んで、先にその手続きだけを前提に書類を準備すると、やり直しになる可能性があります。
通常の相続売却として確認する
100万円を超える場合は、遺産分割協議書など、自分の相続状況に応じた通常の相続手続きを確認します。
亡くなった親の車を売却する全体の流れはこちらです。
【亡くなった親の車は売却できる?相続から売るまでの手続きと流れ】
必要書類も自分のケースに合わせて確認する
相続人の人数や相続方法によって必要書類が変わります。
【所有者が死亡した車の売却に必要な書類は?相続状況別に整理】
遠方の実家にある100万円以下の車を売る場合
実家へ行く前に車検証を確認する
実家まで片道2時間など距離がある場合は、最初に車検証の情報を確認しておくと動きやすくなります。
可能であれば家族に車検証を確認してもらい、
- 所有者
- 登録住所
- 車両情報
などを把握しておきましょう。
車の価格確認と相続手続きを一緒に考える
今回のケースでは、
車が100万円以下なのかを確認すること自体が、相続手続きを決める材料
になります。
そのため、相続書類を片っ端から集めてから査定するのではなく、車の価格確認と必要な相続手続きの確認を並行して進めると無駄を減らしやすくなります。
実家に置いたまま査定できるか確認する
売却先によっては、出張査定などを利用して実家に車を置いたまま査定できる場合があります。
ただし、今回必要なのは単に買取価格を知ることだけではありません。
100万円以下の手続きを検討している場合は、価格を確認できる書面を用意できるかもあわせて確認してください。
売却までに必要なものをまとめて確認する
問い合わせるときは、
「所有者である親が亡くなっている普通車で、相続して売却したい」
と最初から伝えましょう。
さらに、
- 100万円以下の手続きを検討していること
- 車が実家にあること
- 相続人が複数いるか
- 誰が車を取得する予定か
などを伝え、
査定から売却完了までに何が必要なのか
をまとめて確認すると、実家への往復や書類の取り直しを減らしやすくなります。
100万円以下の条件や相続手続きの見通しがついたら、次は実際にどの方法で査定・売却するかを考える段階です。
実家に車がある場合は、家族側の移動負担なども含めて査定方法を整理しておくと進めやすくなります。
所有者死亡・100万円以下の車売却でよくある質問
100万円以下とは買取査定額のこと?
購入価格や中古車サイトの掲載価格ではありません。
遺産分割協議成立申立書を利用する際は、相続する自動車の価格が100万円以下であることを確認できる査定証または査定価格を確認できる資料が必要です。(国土交通省土地総合情報システム)
99万円なら必ず対象になる?
99万円であることを確認できる適切な資料があり、遺産分割協議成立申立書を使うための条件を満たしているのであれば、価格については「100万円以下」の範囲です。
ただし、価格だけで手続きが完結するわけではありません。
所有者、相続人、遺産分割の状況なども確認する必要があります。
100万円ちょうどの場合はどうなる?
国土交通省の案内では、**「100万円以下」**とされています。
そのため、100万円ちょうども「100万円以下」に含まれます。(国土交通省土地総合情報システム)
ただし、100万円であることを確認できる査定証などの資料は必要です。
100万円以下であることはどう証明する?
相続する車の価格が100万円以下であることを確認できる、
査定証または査定価格を確認できる資料の写し等
を添付します。(国土交通省土地総合情報システム)
相続人が複数いても利用できる?
利用できるケースがあります。
ただし、遺産分割協議を行い、誰がその車を相続するのか決まっていることが前提です。
100万円以下だから、ほかの相続人の合意そのものが不要になるわけではありません。
遺産分割協議書は必要?
100万円以下で条件を満たす場合は、相続人全員が実印を押した遺産分割協議書に代えて、車を相続する人が作成する「遺産分割協議成立申立書」を利用できるケースがあります。(国土交通省土地総合情報システム)
売却前に自分名義へ変更する必要はある?
相続による登録手続きは必要ですが、相続人への名義変更と、買取業者など第三者への名義変更を同時に手続きする方法もあります。(国土交通省土地総合情報システム)
そのため、売却することが決まっているなら、自分で先に名義変更を完了させる必要があるかを売却先へ確認してから進めると二度手間を防ぎやすくなります。
軽自動車でも100万円以下なら同じ?
同じではありません。
今回説明している遺産分割協議成立申立書による100万円以下の扱いは、普通車の登録手続きについてのものです。
軽自動車は別の手続きになるため、こちらで確認してください。
【軽自動車を相続して売却するには?亡くなった親名義の車の手続きと流れ】
必要書類が揃う前でも査定できる?
査定について相談できる売却先はあります。
今回のケースでは、車の価格確認が100万円以下の手続きを利用できるか判断する材料になるため、すべての相続書類を先に集める前に査定について相談する方法もあります。
ただし、
所有者が死亡した相続車であること
100万円以下の手続きを検討していること
価格確認に使える書面が必要であること
を最初から伝えておきましょう。
100万円以下と自己判断せず、条件を確認してから売却を進めよう
所有者が死亡した普通車で100万円以下の手続きを検討するときは、
① 車検証上の所有者を確認する
② 普通車であることを確認する
③ 相続人と車を取得する人を確認する
④ 車の価格を確認できる資料を用意する
⑤ 遺産分割協議成立申立書を利用できるか確認する
⑥ 必要な相続・登録手続きを進める
⑦ 査定・売却へ進む
という順番で考えると整理しやすくなります。
100万円以下だからといって、相続手続きそのものがなくなったり、他の相続人に何も確認せず売却できたりするわけではありません。
一方で、条件を満たせば、通常の遺産分割協議書とは異なる遺産分割協議成立申立書を使えるため、登録手続きで用意する書類を減らせる可能性があります。
「古い車だから100万円以下だろう」と先に決めるのではなく、まず価格を確認し、自分のケースで利用できる手続きを確かめてから進めましょう。
相続手続きの見通しがついたら、次はその車をどのように査定し、どこへ売るかを考える段階です。

