高齢の父が運転をやめ、
「もう乗らないから、この車はお前にあげる」
と言われた。
そこで父名義の車を自分名義へ変更しようと調べているうちに、
「車をタダでもらうなら、贈与税がかかるのでは?」
と気になることがあります。
親子で車の名義を変更したという事実だけで、一律に贈与税が決まるわけではありません。
一方、父が所有している車を子どもが無償でもらうのであれば、車という財産の贈与として贈与税を確認する必要があります。
判断するときに見るのは主に、
- 車を無償でもらうのか
- 贈与時点で車にどの程度の価値があるのか
- その年にほかの贈与を受けていないか
- 自分にどの課税方法が適用されるのか
です。
「親子だから税金はかからない」「古い車だから大丈夫」と決めつけず、この順番で確認していきましょう。
名義変更しただけで一律に贈与税がかかるわけではない
贈与税を考えるときに重要なのは、車検証の名前を書き換えたことだけではありません。
実際に誰の財産だった車を、誰がどのような形で受け取ったのかを確認します。
たとえば、父が所有する車について、
「代金はいらないから、この車をあげる」
と子どもへ譲り、今後は子どもの財産として使うのであれば、無償で財産を受け取ることになります。
反対に、名義変更があっても、その実態が単純な無償贈与とは異なるケースもあります。
そのため、
名義変更=自動的に贈与税
とだけ考えるのではなく、実際の財産移転の内容を確認することが大切です。
親から車を無料でもらった場合は贈与になる可能性がある
父が所有している車を子どもが無料でもらうのであれば、車も経済的な価値を持つ財産なので、贈与税の対象になる可能性があります。
ただし、
「車をもらった=必ず贈与税を納める」
という意味ではありません。
贈与税が実際にかかるかどうかは、車の価値や、その年に受けたほかの贈与、適用される課税方法などを確認して判断します。
贈与税はいくらからかかる?
暦年課税には年間110万円の基礎控除がある
一般的な暦年課税では、1月1日から12月31日までの1年間に受けた贈与について、年間110万円の基礎控除があります。
そのため、暦年課税で考える場合は、
1年間に受けた贈与財産の合計額
を確認することが基本です。
たとえば父から車をもらった場合でも、見るのは「車の名義変更をしたかどうか」ではなく、その車を含めて1年間にどの程度の財産を贈与されたかです。
車以外にも贈与を受けている場合は合計して考える
ここで間違えやすいのが、
「車が110万円以下なら大丈夫」
という考え方です。
暦年課税の110万円は、原則として車1台ごとに使える控除ではありません。
また、
父から110万円、母から110万円
というように、贈与した人ごとに別々の110万円が使えるという考え方でもありません。
その年に自分が受けた贈与全体を確認します。
たとえば同じ年に、
- 父から車をもらった
- 父から現金をもらった
- 母からも財産をもらった
という場合は、それらも含めて確認する必要があります。
また、相続時精算課税を選択しているなど、適用される制度によって計算方法や手続きが異なる場合があります。
「自分は暦年課税で考えてよいのか分からない」という場合は、税務署や税理士へ確認しましょう。
親からもらう車の価値はどう考える?
新車で買ったときの価格だけで判断しない
父が300万円で買った車だからといって、
300万円をそのまま贈与された
と単純に考えるわけではありません。
車は使用年数や状態によって価値が変わります。
贈与税を考えるときは、父が購入したときの新車価格だけを見るのではなく、車をもらう時点でどの程度の価値があるのかを確認する必要があります。
たとえば、購入から何年も経っている車なら、新車時より価値が下がっているのが一般的です。
一方で、車種によっては年数が経っていても高い価値が残っていることがあります。
年式・車種・状態などによって現在の価値は変わる
車の現在価値は、年式だけでは判断できません。
たとえば、
- 車種
- グレード
- 年式
- 走行距離
- 車の状態
- 中古車市場での需要
などによって変わります。
そのため、
「10年落ちだから価値ゼロ」
と決めつけるのは避けましょう。
中古車市場で似た条件の車がどの程度で取引されているかを調べたり、査定価格を確認したりすることは、現在の価値を把握するための参考になります。
ただし、買取査定で出た金額が、そのまま税務上の評価額になるとは限りません。
査定額はあくまで判断材料の一つとして考え、税務上どの金額を使えばよいか判断できない場合は、税務署や税理士へ確認してください。
車の評価額を自分で判断できない場合は確認する
一般的な中古車で市場価格の目安が分かりやすければ、ある程度の参考価格を調べることはできます。
一方で、
- 高額な車
- 希少車
- 年式の割に高値で取引されている車
- 中古車価格に大きなばらつきがある車
などは、自分だけで価値を判断するのが難しい場合があります。
特に110万円前後になりそうな車や、その年にほかの贈与を受けている場合は、自己判断だけで「申告は不要」と決めないほうが安心です。
古い親の車なら贈与税はかからない?
古い車でも価値が残っていることはある
高齢の親から譲ってもらう車なら、
「もう古い車だし、たいした価値はないだろう」
と思うこともあるでしょう。
しかし、古い車だからといって必ず価値がゼロになるわけではありません。
人気のある車種や状態のよい車では、年式が古くても一定の価値が残っていることがあります。
そのため、
年式だけで判断せず、今その車がどの程度の価値を持っているのか
を一度確認しておきましょう。
車の価値が低くても、その年のほかの贈与を確認する
仮に父からもらう車の価値が110万円を下回っていたとしても、それだけで確認を終えないようにしましょう。
たとえば同じ年に、
- 現金
- 株式などの財産
- そのほかの贈与
を受けていれば、それらも関係することがあります。
つまり、
車だけで110万円を超えるか
ではなく、
その年に自分が受けた贈与全体はどうなっているか
まで確認することが大切です。
親にお金を払って車を譲ってもらえば贈与税はかからない?
適正な対価で売買する場合と無償の贈与は同じではない
父から車を無料でもらう場合と、父から車を購入する場合では、取引の内容が異なります。
実際に車の価値に見合った代金を支払って売買するのであれば、無償で財産をもらうケースとは同じではありません。
ただし、
「贈与税が気になるから、形だけ売買にすればいい」
と考えるのは避けましょう。
極端に安い金額にすればいいとは限らない
たとえば、現在100万円程度の価値がある車について、
「1万円払ったことにすれば贈与ではない」
と単純に考えることはできません。
財産を著しく低い価額で譲り受けた場合、実際に支払った金額と時価との差額について、贈与として扱われる可能性があります。
そのため、
- 実際の車の価値
- 親へ支払う金額
- 本当に売買として代金をやり取りするのか
を踏まえて考える必要があります。
贈与税を避けるためだけに形式上の安い売買価格を設定するのではなく、判断に迷う場合は税務署や税理士へ確認しましょう。
車の名義変更に関係する税金は贈与税だけではない
贈与税と車に関するほかの税金は分けて考える
車の名義変更について調べていると、贈与税以外にも車に関する税金が出てきます。
ここで分けて考えたいのが、
贈与税は「親から子へ財産を贈ること」に関係する税金
という点です。
車の取得や保有などに関係する税金とは別のものです。
「名義変更すると税金がかかる」という説明を見つけても、それがすべて贈与税を指しているわけではありません。
今回は親子間の贈与税を中心に確認する
父から息子へ車を無料で譲る今回のケースでまず確認したいのは、
車という財産を無償でもらうことで贈与税が関係するか
です。
実際の名義変更では、車検証や必要書類、車庫証明、運輸支局などでの手続きもありますが、それらは贈与税とは分けて考えましょう。
贈与税がかかる場合は誰が申告する?
基本的には車をもらった子ども側が確認する
贈与税は、基本的に財産を受け取った側が申告・納税する税金です。
父から息子へ車を贈与したのであれば、贈与税の申告が必要かどうかを確認するのは、車をもらった息子側です。
「車をくれた父が税金の手続きをする」
と考えないようにしましょう。
申告が必要な場合は期限にも注意する
贈与税の申告が必要な場合は、原則として贈与を受けた年の翌年に申告・納税します。
申告期間は通常、翌年2月1日から3月15日までです。
ただし、期限の日が休日に当たる場合などは扱いが変わることがあります。
自分が申告対象なのか分からない場合は、名義変更をしたあとまで放置せず、早めに税務署や税理士へ確認しておくと安心です。
親から車をもらうときの贈与税はこの順番で確認する
①親から車を無償でもらうのか確認する
最初に、
無償でもらうのか
実際に代金を支払って購入するのか
を整理します。
今回のように父から、
「もう乗らないからあげる」
と言われ、代金を支払わずに車を受け取るのであれば、贈与として確認する必要があります。
②贈与時点の車の価値を確認する
次に、車を受け取る時点でどの程度の価値があるかを確認します。
購入したときの新車価格だけで判断せず、
- 年式
- 車種
- グレード
- 走行距離
- 状態
- 中古車市場での価格
などを参考にします。
必要であれば査定価格も参考材料になります。
ただし、税務上どの価額を使えばよいか迷う場合は専門家へ確認しましょう。
③その年に受けたほかの贈与を確認する
暦年課税で考える場合は、車だけを見るのではなく、その年に受けたほかの贈与も確認します。
父からの現金だけでなく、母など別の人から受けた贈与がある場合も含めて整理しましょう。
④自分に適用される課税方法を確認する
次に、自分が暦年課税で考えるケースなのか、それ以外の制度を利用しているのかを確認します。
相続時精算課税を選択している場合などは、暦年課税だけを前提に判断しないようにしてください。
自分にどの制度が適用されているのか分からない場合は、税務署や税理士へ確認します。
⑤申告が必要か判断する
最後に、
- 車の価値
- その年に受けたほかの贈与
- 適用される課税方法
を確認したうえで、贈与税の申告が必要かを判断します。
特に、
「車の価値が110万円前後になりそう」
「その年に現金なども受け取っている」
「相続時精算課税を利用している」
「車の税務上の価値が分からない」
といった場合は、自己判断だけで申告不要と決めず、税務署や税理士へ確認したほうが安心です。
親から子への車の名義変更方法を知りたい場合
贈与税の確認と、車の名義変更手続きは別に考えます。
父から車を譲ってもらい、自分名義へ変更する場合は、
- 車検証上の所有者
- 普通車か軽自動車か
- 親側と子ども側の必要書類
- 車庫証明が必要か
- どこで名義変更するか
なども確認する必要があります。
贈与税について整理できたら、実際の名義変更に必要な準備を進めましょう。
まとめ|親子の車の名義変更は「車の価値」と「その年の贈与」を確認しよう
親から子へ車の名義を変更したからといって、名義を書き換えたことだけで一律に贈与税が決まるわけではありません。
一方、父が所有する車を無料でもらうのであれば、車という財産の贈与として確認する必要があります。
迷ったら、次の順番で整理してください。
- 父から車を無償でもらうのか確認する
- 贈与時点の車の価値を確認する
- その年に受けたほかの贈与を確認する
- 自分に適用される課税方法を確認する
- 贈与税の申告が必要か判断する
一般的な暦年課税には年間110万円の基礎控除があります。
ただし、
「車が110万円以下なら何も確認しなくていい」
という意味ではありません。
同じ年に受けたほかの贈与や、自分に適用される課税方法まで確認する必要があります。
車の価値や税務上の扱いを自分だけで判断できない場合は、名義変更を進める前に税務署や税理士へ確認しておきましょう。
